山茶花と椿は、どちらも日本人にとって馴染みのある花木です。街中で見かける機会も多いですが、花や葉の形がとてもよく似ているため、どちらかわからない人も少なくないでしょう。
今回は、プロでも難しいと言われる山茶花と椿の違いや見分け方を詳しくご紹介します。ぜひ参考にして、よりきれいな花や葉の観賞を楽しんでくださいね。よろしくお願いします。
山茶花と椿の違いとは?見分け方をチェック!
山茶花と椿は、両方ともツバキ科ツバキ族の樹木です。原産国は日本で、国内では様々な場所で見ることができます。ここでは、山茶花や椿の情報に加えて、それぞれの特徴や見分け方を解説します。
山茶花と椿はどんな花?
山茶花と椿はどちらも美しい花を咲かせる樹木で、一見区別がつきにくいですが、細かな違いがあります。
■山茶花
生垣にも頻繁に使われている山茶花は、学名がCamellia sasanquaの低木。日本の固有種で、ほかの国や地域では見られません。
耐寒性が高く、日向だけでなく半日陰でも育つため、国内では庭木として高い人気を誇ります。秋になっても葉が色づかず、一年中緑の葉をつけているのも特徴です。
■椿
昔から観賞用としてはもちろん、茶花としても好まれた椿は、日本を代表する花木の一つ。種から採られる油も、幅広い用途で使われてきました。縄文時代の遺跡から種が発見されたり、万葉集に記述があったりすることからも、長く日本で親しまれてきたことがわかります。
学名はCamellia japonicaの高木で、海外でも人気が高く、台湾や朝鮮半島でも見ることができます。山茶花と同じ常緑樹ですが、品種によって花の色や形、葉の形は様々です。
山茶花と椿の違い|花の落ち方
見た目がよく似ている山茶花と椿を見つけるのに、一番基本的な方法は花の落ち方を観察することです。
山茶花は、桜をはじめ多くの花と同じように花びらがバラバラになって散ります。一方、椿は花首から丸ごとぽとりと落ちる品種がほとんどです。そのため、昔は「首が落ちて縁起が悪い」と武士から嫌われていました。
なお、品種によっては椿でも花びらが分かれて散るものもあるので、なるべく他のポイントもチェックして山茶花か椿かを見極めることをおすすめします。
山茶花と椿の違い|開花時期
山茶花と椿の開花時期は似ていますが、少しずつ異なります。
山茶花の開花時期は、10月頃からスタートします。山茶花は大きく分けて3種類あり、そのうちサザンカ群が10月~12月、カンツバキ群が11月~3月、ハルサザンカ群が12月~3月に華を咲かせることが多いです。
一方、椿の開花時期は12月~4月頃。品種によって多少違いはあるものの、一般的には山茶花の方が早く開花します。
山茶花と椿の違い|花・葉・実の見た目
山茶花と椿は非常に似ていますが、花や葉、実に少しずつ違いがあります。見分ける方法を押さえて、散歩などで目にする樹木がどちらなのかチェックしてみましょう。
■花の見分け方
山茶花の花は、全体的にやや平面的で花びらが薄いです。完全に平開して咲くため、花びらが湾曲したり、シワができたりすることもあります。また、雄しべが楕円状に開くのも山茶花の花の特徴と言えます。
一方で、椿の花はやや筒状かつ立体的で、花びら自体にも厚みがあります。そのため、シワが少なく滑らかな見た目です。また、雄しべは根元がくっついており、前に向かってまっすぐに伸びています。
■葉の見分け方
山茶花と椿の葉はとてもよく似ています。見分けるのが難しいと言われていますが、違いはあるのでぜひ参考にしてください。
山茶花の葉は、全体的にツヤがありません。また、葉脈の中心が黒っぽく、裏側の葉脈部分には細かい毛が生えています。さらに、葉の縁の鋸歯と呼ばれるギザギザが椿と比べて深めなのも特徴です。サイズは、椿の葉よりも一回り小ぶりで、3cm~7cm程度のものが目立ちます。
他方で椿の葉は、ワックスをかけたようなツヤがあり、太陽にかざした時に葉脈が透き通るように見えるのが特徴です。鋸歯が浅く、葉の裏側には毛がありません。また、サイズは山茶花の葉よりも一回り大きめで、5cm~12cmです。
■実の見分け方
葉の裏と同じように山茶花には、実にも毛があります。一方、椿は実に毛が無くツルツルとしています。
山茶花と椿の違い|香り
山茶花は豊かな香りも魅力的です。色によって香りが異なり、白は優しい匂い、ピンクはジャスミンのように濃厚な香りを楽しめます。
一方、椿はもともとほとんど香りがありません。しかし、最近では沖縄などに自生する香り高いヒメサザンカと様々な園芸種を交雑させた「香り椿」も人気です。
山茶花と椿を見分ける際の注意点
山茶花と椿は、花の落ち方や見た目など様々な方法で見分けられます。ただし、見分けるときには2点に注意が必要です。
違いがわかりにくい品種もある
山茶花と椿はどちらもツバキ科ツバキ属の樹木であるうえ、最近では品種改良が進み、似た性質を持つ品種も増えてきました。
例えば、交雑種のカンツバキは、「ツバキ」という名前が付いていながら開花時期が早めで、花びらが一枚ずつ散ります。原種の区別は比較的簡単ですが、品種改良されたものはあまり違いにこだわらず、単純に美しさを楽しむのも良いでしょう。
チャドクガに注意!
山茶花や椿には、「チャドクガ」という毛虫がついていることがあります。チャドクガは毒を含んだ針を持っており、触れると激しい痒みや湿疹などの症状が現れます。
そのため、樹木に触れるときには、手袋などで肌を保護しましょう。チャドクガ自体が見当たらない場合も、脱皮した皮や葉についた毛だけで症状が出ることがあるので、虫に食べられた痕がある花や葉を触るときには十分に気を付けてください。
まとめ
長年日本人に愛されている山茶花と椿は、どちらもツバキ科ツバキ属の非常によく似た樹木です。しかし、花の散り方や開花時期、見た目などに少しずつ違いがあるので、散歩などで目にしたら、様子をチェックしてみてください。
違いを知ることで、きれいな花の観賞をいっそう楽しめるでしょう。