花火は日本の夏の風物詩。全国各地で多くの花火大会が開催されていて、たくさんの人が花火の観賞を楽しみます。そんな花火はきれいなだけでなく、慰霊という特別な意味を持つことをご存知でしたか。
今回は、花火が持つ慰霊の意味や日本で花火が楽しまれるようになった歴史などをご紹介します。花火に関する事を知って、観賞を楽しみましょう。よろしくお願いします。
花火には慰霊の意味がある?
花火は華やかな見た目で、長い間日本人から愛されています。しかし、花火は美しいだけではありません。日本人にとって死者の霊を慰める大切な意味が込められています。
花火に慰霊の意味があるのはなぜ?
古くから日本人にとって火は鎮魂を意味するものでした。不浄なものを焼き尽くして闇を照らす力があるとされており、炎は神聖であると考えられていました。
お盆に先祖の霊を迎え入れるための迎え火や、霊をあの世に送り返すための送り火を焚くことからも、日本人にとって炎が特別な存在だったことがわかります。
花火は火をもとに作られているため、死者をと尊んだり、慰めたりするために使われることがあります。
慰霊の意味を込めて行われている花火大会
全国津々浦々で開催されている花火大会も、もとは鎮魂の意味を込めて始められたものが少なくありません。
例えば、海田川花火大会は、飢餓と疫病が大流行し、たくさんの人が亡くなったことがきっかけで始められました。八代将軍の徳川吉宗が亡くなった人の霊を慰めたり、疫病退散を願ったりして行った水神祭で花火を打ち上げたことに由来します。
また、新潟県で開催される長岡まつりは、1945年に第二次世界大戦の長岡空襲で亡くなった人を慰め、復興に力を注いだ人たちに感謝の気持ちを表すために始まりました。空襲が始まった8月1日の午後10時30分に合わせて、白一色の花火が打ち上げられます。市内の寺院では慰霊の金が鳴らされ、人々は平和を祈ります。
さらに、福島県をはじめとした東日本大震災で大きな被害を受けた地域でも、地震で亡くなった人への慰霊の意味を込めて、毎年花火大会が行われています。
花火大会が夏に多い理由は?日本に花火が広がった歴史も!
日本では、夏に花火大会が開催されることが多いです。ここでは、夏に花火大会が行われる理由や日本で花火が愛されるようになった歴史をご紹介します。
日本で夏に花火大会が多い理由
海外では、年末年始のカウントダウンなどに花火が打ち上げられることが多いです。一方、日本ではお盆の前後にたくさんの花火大会が開催されます。
これは、花火に慰霊の意味が込められているからです。先祖を供養するお盆に花火を打ち上げ、亡くなった人を尊びます。一説では、花火にはお盆の迎え火や送り火の役割もあると言われています。
また、日本で最古の花火大会である隅田川花火大会は、両国川開きとして旧暦の5月末から8月末に開催されていました。これが発展して華やかなものが好きな江戸の人々から支持され、川開きの定番として定着した歴史も、夏に花火大会が多いことに影響しています。
さらに、日本の蒸し暑い夏の気候も花火大会の季節と関係しています。暑い時季に夜風に当たりながら花火を眺めることが人気を集め、花火の観賞が夕涼みの定番になりました。
花火の歴史とは?
花火の原型とされる「のろし」の歴史は古代インドやギリシア、ローマなど紀元前の世界までさかのぼります。現在の花火の元になったものが生まれたのは6世紀の中国。発明された当時は、ロケット花火のようなもので、観賞目的ではなく武器として使われていたという説もあります。
その後、花火はルネッサンス期だった14世紀後半のイギリスで発展しました。美しさから王族や貴族を中心に広がり、結婚式や戴冠式で利用されていました。
日本で花火の製造が始まったのは、鉄砲の伝来とほぼ同時期の16世紀です。日本人では徳川家康が初めて現在の打ち上げ花火に近いものを見たとされています。その後、将軍や大名の間で花火が流行しました。
戦国時代や安土桃山時代を経て江戸時代になると戦が無くなったことから、火薬の使い道が減少し、火薬屋は花火の製造を始めました。
1733年になると、日本最古の花火大会とされる隅田川花火大会が始まります。掛け声としても有名な玉屋や鍵屋などの花火師が登場し、競い合うように花火を打ち上げたことで、花火の文化が庶民にも広がっていきました。
ただし、このころの花火は白っぽいものでした。現在のような色鮮やかな花火が生まれたのは大正時代です。今では、夏になると全国各地でたくさん花火大会が開催されており、多くの人がカラフルで華やかな花火の観賞を楽しんでいます。
まとめ
夏になると美しい花火の観賞を楽しむ人が多いですが、花火は美しいだけでなく、亡くなった人を慰めたり、尊んだりする意味もあります。実際、全国各地で行われている花火大会は、慰霊の意味を込めて始まったものも少なくありません。
花火大会に足を運んだ際は、花火の意味や歴史も思い出しながら、観賞を楽しんでみてはいかがでしょうか。